1.種類株主総会(1項)
第322条 (ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会)
1 種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該行為は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
一 次に掲げる事項についての定款の変更(第111条第1項又は第2項に規定するものを除く。)
イ 株式の種類の追加
ロ 株式の内容の変更
ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加
一の二 第179条の3第1項の承認
二 株式の併合又は株式の分割
三 第185条に規定する株式無償割当て
四 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集(第202条第1項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)
五 当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集(第241条第1項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)
六 第277条に規定する新株予約権無償割当て
七 合併
八 吸収分割
九 吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継
十 新設分割
十一 株式交換
十二 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得
十三 株式移転
十四 株式交付
種類株式発行会社が一定の行為をする場合に、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、その種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、効力を生じないとされています。
以下、1項1号イ~ハの行為についてみていきます。

2.株式の種類の追加(1項1号イ)
例えば、以下の図において剰余金を優先的に配当するC種類株式が新たに追加されることとなる場合、A種類株式とB種類株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあります。
これらの株主を保護するため、322条の種類株主総会の特別決議が必要であるとされています。


3.株式の内容の変更(1号1号ロ)
剰余金優先配当株式であるB種類株式が内容を変更して配当額が削減される場合において、B種類株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、通常の株主総会特別決議に加えて、B種類株式の株主を構成員とする種類株主総会の特別決議が要求されます。


4.発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加(1項1号ハ)
4-1.発行可能株式総数の増加
発行可能株式総数が増加する場合です。
A種類株式とB種類株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合に、それぞれの種類株主を構成員とする種類株主総会の特別決議が必要となります。

4-2.発行可能種類株式総数の増加
B種類株式の発行可能種類株式総数が増加する場合です。


5.種類株主総会の特則(1項1号括弧書)
1項1号括弧書で111条1項(取得条項付株式)と2項(譲渡制限株式、全部取得条項付種類株式)に規定するものが除かれていますが、これはより厳格な手続きが要求されているためです。



6.例外(2項,3項)
第322条
2 種類株式発行会社は、ある種類の株式の内容として、前項の規定による種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定めることができる。
3 第1項の規定は、前項の規定による定款の定めがある種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会については、適用しない。ただし、第1項第1号に規定する定款の変更(単元株式数についてのものを除く。)を行う場合は、この限りでない。
1項の例外です。ある種類の株式の内容として、種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定めることができます(2項)。
ただし、1項1号の定款の変更(単元株式数についてのものを除く)を行う場合は、決議を不要とすることができません(3項但書)。


7.定款変更の手続き(4項)
第322条
4 ある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式について第2項の規定による定款の定めを設けようとするときは、当該種類の種類株主全員の同意を得なければならない。
ある種類の株式の発行後に定款を変更して、損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会を不要とする定款の定めを設けようとするときは、株主総会の特別決議に加えて当該種類の種類株主全員の同意を得ることが必要です。
