1.譲渡等承認請求
1-1.株主からの承認の請求(136条)
第136条 (株主からの承認の請求)
譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。
これから株式を譲渡しようとする株主が、株式会社に対して承認請求をする場合です。

請求事項(138条1号)
株主からの譲渡等承認請求は、138条1号イ~ハの事項を明らかにして行います。
第138条(譲渡等承認請求の方法)
次の各号に掲げる請求(以下この款において「譲渡等承認請求」という。)は、当該各号に定める事項を明らかにしてしなければならない。
一 第136条の規定による請求 次に掲げる事項
イ 当該請求をする株主が譲り渡そうとする譲渡制限株式の数(種類株式発行会社にあっては、譲渡制限株式の種類及び種類ごとの数)
ロ イの譲渡制限株式を譲り受ける者の氏名又は名称
ハ 株式会社が第136条の承認をしない旨の決定をする場合において、当該株式会社又は第140条第4項に規定する指定買取人がイの譲渡制限株式を買い取ることを請求するときは、その旨
1-2.株式取得者からの承認の請求(137条)
第137条(株式取得者からの承認の請求)
1 譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。
株主が譲渡承認請求をせずに行った株式の譲渡も、当事者間では有効です。
この場合、株式取得者から譲渡承認請求をすることができますが、原則として株主と共同でする必要があります。

株券発行会社の場合
株券発行会社である場合は、取得した株券を株式会社に提示することにより株式取得者が単独で譲渡等承認請求を行うことが認められています(会社法施行規則24条)。

請求事項(138条2号)
株式取得者からの譲渡等承認請求は、138条2号イ~ハの事項を明らかにして行います。
第138条
二 前条第1項の規定による請求 次に掲げる事項
イ 当該請求をする株式取得者の取得した譲渡制限株式の数(種類株式発行会社にあっては、譲渡制限株式の種類及び種類ごとの数)
ロ イの株式取得者の氏名又は名称
ハ 株式会社が前条第1項の承認をしない旨の決定をする場合において、当該株式会社又は第140条第4項に規定する指定買取人がイの譲渡制限株式を買い取ることを請求するときは、その旨
2.譲渡の承認・不承認の決定
第139条(譲渡等の承認の決定等)
1 株式会社が第136条又は第137条第1項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 株式会社は、前項の決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者(以下この款において「譲渡等承認請求者」という。)に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。
譲渡等承認請求を受けた株式会社は、承認するか否かを決定し、譲渡等承認請求者に通知します。
請求日から2週間以内に通知をしなければ、145条1号により譲渡を承認をしたものとみなされます。
承認しない場合において、買取請求がされていないときは譲渡不可となり、通知をすることにより手続きは終了します。
譲渡承認請求とともに買取請求がされているときは、次の局面へ進みます。

3.株式会社・指定買取人による買取り
第140条(株式会社又は指定買取人による買取り)
1 株式会社は、第138条第1号ハ又は第2号ハの請求を受けた場合において、第136条又は第137条第1項の承認をしない旨の決定をしたときは、当該譲渡等承認請求に係る譲渡制限株式(以下この款において「対象株式」という。)を買い取らなければならない。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 対象株式を買い取る旨
二 株式会社が買い取る対象株式の数(種類株式発行会社にあっては、対象株式の種類及び種類ごとの数)
2 前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3 譲渡等承認請求者は、前項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、当該譲渡等承認請求者以外の株主の全部が同項の株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。
4 第一項の規定にかかわらず、同項に規定する場合には、株式会社は、対象株式の全部又は一部を買い取る者(以下この款において「指定買取人」という。)を指定することができる。
5 前項の規定による指定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
買取請求がされている場合、対象株式を株式会社が買い取るか、または、株式会社以外の別の者を買取人として指定するかの選択をすることになります。

第141条(株式会社による買取りの通知)
1 株式会社は、前条第1項各号に掲げる事項を決定したときは、譲渡等承認請求者に対し、これらの事項を通知しなければならない。
2 株式会社は、前項の規定による通知をしようとするときは、一株当たり純資産額(一株当たりの純資産額として法務省令で定める方法により算定される額をいう。以下同じ。)に前条第1項第2号の対象株式の数を乗じて得た額をその本店の所在地の供託所に供託し、かつ、当該供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければならない。
3 対象株式が株券発行会社の株式である場合には、前項の書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、当該交付を受けた日から一週間以内に、前条第1項第2号の対象株式に係る株券を当該株券発行会社の本店の所在地の供託所に供託しなければならない。この場合においては、当該譲渡等承認請求者は、当該株券発行会社に対し、遅滞なく、当該供託をした旨を通知しなければならない。
4 前項の譲渡等承認請求者が同項の期間内に同項の規定による供託をしなかったときは、株券発行会社は、前条第1項第2号の対象株式の売買契約を解除することができる。
第142条(指定買取人による買取りの通知)
1 指定買取人は、第140条第4項の規定による指定を受けたときは、譲渡等承認請求者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 指定買取人として指定を受けた旨
二(略)
2~4(略)
株式会社または指定買取人による買取りが決定された後、譲渡等承認請求者に対して通知します。
通知に際しては一定の額を供託所に供託のうえ、供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付します。
このとき、それぞれ一定の期間内に通知がなされない場合は、145条2号により譲渡を承認をしたものとみなされます。

4.売買価格の決定
第143条(譲渡等承認請求の撤回)
1 第138条第1号ハ又は第2号ハの請求をした譲渡等承認請求者は、第141条第1項の規定による通知を受けた後は、株式会社の承諾を得た場合に限り、その請求を撤回することができる。
2(略)
第144条(売買価格の決定)
1 第141条第1項の規定による通知があった場合には、第140条第1項第2号の対象株式の売買価格は、株式会社と譲渡等承認請求者との協議によって定める。
2 株式会社又は譲渡等承認請求者は、第141条第1項の規定による通知があった日から二十日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができる。
3 裁判所は、前項の決定をするには、譲渡等承認請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない。
4 第1項の規定にかかわらず、第2項の期間内に同項の申立てがあったときは、当該申立てにより裁判所が定めた額をもって第140条第1項第2号の対象株式の売買価格とする。
5 第1項の規定にかかわらず、第2項の期間内に同項の申立てがないとき(当該期間内に第一項の協議が調った場合を除く。)は、一株当たり純資産額に第140条第1項第2号の対象株式の数を乗じて得た額をもって当該対象株式の売買価格とする。
6,7(略)
買取通知がなされると、株式会社・指定買取人と譲渡等承認請求者との間で売買契約が成立します。
以後、株式会社・指定買取人の同意がなければ譲渡等承認請求の撤回をすることができなくなります。
売買価格は、当事者の協議や裁判所への申立て手続きなどにより決定します。

第145条(株式会社が承認をしたとみなされる場合)
次に掲げる場合には、株式会社は、第136条又は第137条第1項の承認をする旨の決定をしたものとみなす。ただし、株式会社と譲渡等承認請求者との合意により別段の定めをしたときは、この限りでない。
一 株式会社が第136条又は第137条第1項の規定による請求の日から二週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内に第139条第2項の規定による通知をしなかった場合
二 株式会社が第139条第2項の規定による通知の日から四十日(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内に第141条第1項の規定による通知をしなかった場合(指定買取人が第139条第2項の規定による通知の日から十日(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内に第142条第1項の規定による通知をした場合を除く。)
三(略)

5.決議機関のまとめ
株式会社が決定する事項につき、それぞれ決議機関が異なります。
また、株式会社による買取事項の決定の際の株主総会においては、譲渡等承認請求者は、議決権を行使することができないことに注意が必要です(140条3項)。

